2024年より海運業界へ適用開始されたEU-ETS、25年から開始されるFuelEU Maritime規則における、責任主体変更時の規則や考慮事項を以下に記載致します。EU寄港歴のある船舶が、売買船などにより責任主体が変更される際はご留意ください。
EU-ETS
責任主体
EU-ETSの責任主体は船主(Registered Owner)もしくは船舶管理会社(DOC Holder)です。船舶管理会社を責任主体とする場合は、船主と船舶管理会社間で委任状を締結し当局へ提出する必要があります。
EUA償却義務
年の途中で責任主体が変更となる場合、その期間に応じて前後の責任主体がそれぞれEUA償却の義務を負います。例えば、6月30日に責任主体の変更が行われた場合、1月1日から6月30日までは以前の、7月1日以降は変更後の責任主体がそれぞれの期間に発生したGHG排出量に基づいてEUAを償却します。責任主体が変更となっても、自身の責任下において排出されたEUAは、翌年の償却期限(翌年の9月30日)までに必要となる点は注意が必要です。
変更前の責任主体の義務
以前の責任主体は責任主体変更後、可能な限りすみやかに、そして3か月以内に、管轄国および買主側のETS責任主体に対して、その年の自身が責任を持つ期間(=1月1日から変更時までの)におけるVerifyされたEmission Reportを提出します(MRV規則Article11-2)。実務的にはThetis-MRV上で必要な操作を行います。
変更後の責任主体の義務
12月31日時点で、ある船舶に対してETSの責任を持つ主体が、1年間分のEmission Reportを管轄国へ提出する義務があります。ただし前述の通りEUAの償却義務は1年間分ではなく、自身が責任を引き受けた時点からとなります。(MRV規則Article11-1)
モニタリングプラン
モニタリングプランはETSの責任主体ごとに、その会社の手順に合うように個々に作成され、検証される必要があります。
EU-MRV規則
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:02015R0757-20230605
FuelEU Maritime
責任主体
FuelEU Maritimeの責任主体は船舶管理会社(DOC Holder)です。
GHG強度の引継ぎ
FuelEU Maritimeに関する実績/記録は変更前のDOC Holderから変更後のDOC Holderへ引き継がれ、その年の終了時点のDOC Holderが、1年間分の船舶の運航実績に応じた必要な対応を取ります。DOC Holder変更時点でCompliance SurplusやCompliance Deficitがあれば、それらも新しいDOC Holderへ引き継がれます(FuelEU Directive Article15-4-c)。船舶の状況により変更前/変更後のDOC Holderに有利/不利が生じることが想定されますが、これらの補償に関する規則は無く、個々の商業上の契約に委ねられます。
変更前のDOC Holderの義務
変更前のDOC Holderは変更後可能な限りすみやかに、そして1か月以内に、FuelEU Database(=Thetis-MRV)上で変更時までのEmission Reportを入力しVerifierによる検証を済ませます。(FuelEU Directive Article 15-4-a,b)
モニタリングプラン
モニタリングプランはDOC Holderごとに、その会社の手順に合うように個々に作成され、検証される必要があります。
/////Update on 04 Dec. 2024//////
EMSAによる第3回FuelEU Maritime Webinarにて、 「2026年1月31日に船舶のDOC HolderがCompanyAからCompanyBに変更されたと仮定した場合のそれぞれの会社の役割」について以下の通り説明がありました。
Company A(2026年1月31日までの船舶のDOC Holder)
- 2025年のFull Emission ReportをVerifierに提出し、Verificationを完了させます(2026/3/31までに)
- 2026年1月31日までのPartial Emission ReportをVerifierに提出し、Verificationを完了させます(2026/2/28までに)
Company AまたはCompany B(2026年2月1日以降のDOC Holder)
- 2025年のEmission Reportに基づき、必要に応じてbanking/borrowing/poolingの登録を行います
- 必要があれば2025年に生じたPenaltyを支払います
Source: EMSA
2025年分のBanking等の登録やPenalty支払いはCompanyA, Bどちらも可能となっています。一方で、おそらくThetis-MRVのシステム上、Company AのFleetから船舶を消去してCompany Bが船舶を登録しなければ、Company BはAから引き取った船舶に対してモニタリングプランの登録やEmission Reportの入力を行うことが出来ないと思われます。
もしCompany Aが2025年分のFuelEU Maritime DOC受け取りまで責任を持つ場合、Company Bは船舶の引き渡しを受けた2月1日から、DOCを受け取る6月末までの約5か月間、その船舶のThetis-MRVの操作が出来ないことになるため、その期間に欧州への寄港がある場合は不都合が生じる可能性があります。売買船時にはこうしたことも考慮し、Buyer, Sellerどちらがどのような義務を負うか検討することが重要です。
FuelEU Directive
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/1805/oj
売却した船舶をThetis-MRVのアカウントから消去する方法は、以下リンク先のQuestion 7をご参照ください。
https://www.emsa.europa.eu/reducing-emissions/webinars_and_tutorials/faq-for-users-thetis-mrv.html
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